fiberを塗料や素材に照射してみる【その2 カラー編】

 今回は、前回の『fiberを塗料や素材に照射してみる』(2月7日掲載)で「何か作ってみようと思います」と書いていましたが、その前に。
 前回を踏まえてもう一つテストを行いたいと思います。

 ★前回はこちら↓

  『fiberを塗料や素材に照射してみる』(2月7日掲載)



 カラーのものにはどんな反応があるか、アクリル絵の具と水性ペンキ、油性ペンキを使用して彫刻テストを行ってみます。



 上段 左から アクリル絵の具/黄緑、緑、群青、紺、紫 水性ペンキ/金 油性ペンキ/銀
 下段 左から アクリル絵の具/赤、橙、黄、黄土、茶、黒、白
【 使用機器その他 】
・レーザー機:speedy300 flexx (fiber 30w)
・レンズ:3.2inch (fiber専用レンズ)
・エアアシスト:ON
・DPI:500
・PPI/Hz:50000
・Zoffset:0.0mm

・ケント紙
・下塗り材(透明タイプ)
※透明下塗り材をケント紙全体に塗り十分乾燥させた後、各塗料を原液のまま(薄めずに)2回塗ります(1回目塗り→乾燥→2回目塗り→乾燥)。


 計14色それぞれにタテ3mm幅のライン彫刻をパワーやスピード、彫刻回数を変更しながらA~Lまで計12本加工しました。

●上段、下段ともに
A パワー/20 スピード/15 彫刻回数/1回
B パワー/20 スピード/15 彫刻回数/2回
C パワー/15 スピード/20 彫刻回数/1回
D パワー/40 スピード/20 彫刻回数/1回
E パワー/80 スピード/20 彫刻回数/1回
F パワー/80 スピード/20 彫刻回数/2回
G パワー/100 スピード/20 彫刻回数/2回
H パワー/100 スピード/10 彫刻回数/2回
I  パワー/100 スピード/15 彫刻回数/2回
J パワー/100 スピード/10 彫刻回数/1回
K パワー/100 スピード/5 彫刻回数/1回
L パワー/100 スピード/5 彫刻回数/2回

 今回も前回同様、筆で紙面に塗った状態ですのでその塗膜は極薄く、fiber照射を行った部分で白っぽい色に見える部分は塗膜が剥がれた状態です。
 

 今回はケント紙に下塗り材を塗りよく乾燥させた後、それぞれ塗料を原液のまま、水などで薄めずに塗りました。
 ケント紙自体への塗料の染み込みの軽減には繋がったようですが、fiberレーザーでは下塗り材(透明タイプ)は剥れないらしく、塗料の塗膜がレーザー照射により剥がれても下塗り材に染み込んだ塗料の跡形は消えず、薄茶色のような色が加工痕に残りました。


●反応あり/変色あり

 左から 水性ペンキ/金 アクリル絵の具/黄土、白

 金、黄土、白ともにAの段階から、金は黄色味がかった灰色、黄土は明るい茶色、白は白っぽい灰色への変色が見られ、E以降は塗膜が薄く削れ下地の色が所々見えるようになりました。

 その後Hで、白の塗膜は部分的に残ってい入るものの、金と黄土の塗膜はすべて剥がれました。
 しかし下塗り材に染み込んだ塗料の跡形が残っているため、完全に白色(紙の色)にはならず薄茶色になっています。

★黄土、金のHのラインが少し黒くくすんで見えるのは、Iを彫刻した時の粉塵が付着した為です。
 以後、スピードを遅くするに連れ黒っぽい(白は濃い灰色)粉塵が多く出るようになりました。
 
 Hで塗料がほぼ剥がれることが解ったのでIでスピードを5%上げると、黄土は加工を行った縁回りに、金と白は中央を中心にほぼ全体に薄く塗膜が残りました。
 それを踏まえJはスピード10で、Kはスピード5で、それぞれ彫刻を1回ずつにしてみたところ、焦げたような黒いスス(白は濃い灰色の粉塵)が加工を行った部分全体に溜まった状態で終了したので、1回でスピードを遅くし彫刻するよりも、2回に分けた方がキレイに仕上がる事も解りました。

 Lは金、黄土、白ともに塗膜はすべて剥がれたものの、黄土は加工を行った縁回り(特に上側)に黒いススが溜り、金は中央付近に、白は全体的に茶色く焦げ跡が残りました。 


●反応あり/変色無し

 左から アクリル絵の具/緑、群青、紺 油性ペンキ/銀
 左から アクリル絵の具/茶、黒

 こちらもAから反応がありましたが金、黄土、白のような変色ではなく、塗膜が削れた状態(ツヤが無くなりマットな感じになった状態)です。
 緑、群青、紺、茶の4色は塗膜が極浅く削れマットな感じになったのに対し、銀、黒の2色はAの段階からすでに塗膜が剥がれ、下地が所々見えている状態になりました。

 以後、緑、紺、茶はEから徐々に塗膜が剥がれ下地が見える様になりましたが、上記『反応あり/変色あり』で記述した金と黄土の塗料がすべて剥がれた位置Hでは銀、茶、黒は同じようにすべて剥がれているものの、緑、群青、紺はまだ塗膜が所々残っている状態です。

 他、JとKは、茶と黒は『反応あり/変色あり』の2色と同じように焦げたような黒いススが全体的に溜まりましたが、緑、群青、紺の3色は各色の粉塵が溜まった状態に、銀はJ、Kともに粉塵の付着はありませんが、Kの中央から右端に掛けて焦げた跡が付きました。

 Lは、茶と黒はすべて塗膜が剥がれ塗料が下塗り材に染み込んだ跡形(薄茶色)が見えている状態、群青、紺は全体に薄く各色が残っている状態、緑は部分的に薄く緑が残っている状態でした。
 銀は塗料の塗膜が剥がれ、下塗り材が焦げたと同時に少し溶けた跡が残った他、加工中火花が大きく飛散し加工を行っている直下周辺の銀色がくもり、薄く茶色く変色しました。


●少し反応あり

左から アクリル絵の具/黄緑、紫

 黄緑、紫ともにA~Cは光に透かすと角度により痕が見える程度。
Dあたりから徐々に塗膜が削れ、アクリル絵の具の光沢が無くなりマットな見た目になっていますが最終Lの段階でもまだところどころ塗膜が残っている状態です。
 
 黄緑はこの後下↓で記述する黄と同様、fiberのレーザー光が透過してしまい黄程ではないものの
反応が出難い色のようです。

 紫は見た目が紺や緑よりも黒に近い印象なので、黒のような反応になると予想していましたが、結果は思ったほどの反応が無い状態でした。


●ほぼ反応なし

左から アクリル絵の具/赤、橙、黄

 目視では光に透かして見ると、赤はG、橙はE、黄はBあたりからそれぞれ極薄くレーザーが照射された痕が伺えますが、Lまで進んでも塗膜が剥がれる事は無く、薄く黒っぽい茶色の痕がついただけでほぼ無反応でした。




●まとめ
・ 色により適正なパラメーターが異なり、また、見た目の色と加工の出来具合は比例しないようです。
 見た目が黒に近い紫は黒よりも反応がとても鈍く、黄に近く見える黄土は黄よりも反応がとても良く変色もしました。
 黄土は見た目黄に近いように見えますが、反応の起こり方が金や茶に近い事から、含まれる色素も金や茶に近いということのようです。

・ 透明(色付き含)なもの、乳白色のものには透過してしまい反応しないfiberレーザーの性質上、黄色に反応しないのは何となく想像出来ていましたが、赤がほぼ全くと言っていいほど無反応な事が意外でした。
 というのは、以前行ったfiberを使用した赤色アクリル板への加工テストでは色や質感の変化などがあり、それを応用してキーホルダー作成も行いました。
 なので今回も当然のように何かしらの反応があるものと思っていましたが、しかし予想は大幅にはずれ、『ほぼ反応なし』の中でも一番反応が無かった(薄い)ものという結果になりました。

・ アクリル絵の具とアクリル板は同じ『アクリル』でも異なるもののようです。
アクリル絵の具の白は白っぽい灰色~濃い灰色に変色しましたが、アクリル板の白では、濃い灰色~黒に変色します(配合される成分によります)。
 また、アクリル絵の具の黒、赤、群青、茶はそれぞれ、塗膜が剥がれる、薄く黒っぽい痕が残るなどの反応を示しましたが、同色のアクリル板では変色する他、板自体の質感が変わるなど様々な反応を見せます。
 薄いアクリル板の代用にアクリル絵の具を他の素材に塗ってfiber加工・・・は、少し考えた方が良さそうです。

・その他
 アクリル板の加工時に有効的だったZoffsetの利用(加工台の高さを調節し焦点をわざとずらす)もテストを行ってみましたが、良い結果を得ることは出来ませんでした。
 やはりアクリル絵の具とアクリル板は同じような加工は出来にくいようです。



※今回のテストに使用した塗料は、アクリル絵の具、水性ペンキ(金)、油性ペンキ(銀)それぞれ各1社のもののみです。
 他社製品との比較は行っておりませんので、この度記述したテストの結果がすべての製品に当てはまるとは言えません。


 
★以前の加工テストおよびキーホルダー作成はこちら↓

『frexxでキーホルダー作り』2015年10月14日 掲載)

『fiberレーザー機でマーキングをいろいろ試してみる』2015年10月1日 掲載)

co2(炭酸ガス)とfiber(紫外線)とflexx2015年9月14日 掲載)






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